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ペテン師の友人ができた。

彼女は私の彼が好きだった。

なのにずっとだまっていた、

彼は去年失踪した。

彼は何もかも隠してここにいた、出身地に、過去の事、親の事、国籍さえ、

だからなのか

「いなくなりたい」

といつもいった。

友人の名前はレナ。

今はもう恋人の名前など思い出せない。

ある日から私たちは、私の家で半同居

彼がいなくなってから、食事は喉を通らなかった。

彼の作る料理はとてもおいしくて、

とりわけオムライスは、この世のものとも思えないほどのおいしさ。

私は彼とその食事が好きだった。

悲壮に明け暮れた日に、彼女はオムライスをつくった、

彼には到底及ばない、評価は丁度半分くらいだ、

だから彼女は泣きながら半分たべた、

私も泣いていた。

彼女は人の彼氏を奪う悪女と呼ばれていたが、

今度ばかりは本気だといった。

私にはそんな事はどうでもよかった、

あのときのオムライスが全て、

彼女は新しい料理に手を出した、

チキンライスに、カレーに、卵料理。

私には、それがとてもうらやましくて、

段々彼を超しそうな彼女に嫉妬する。

今では思い出せない彼の名前さえ、

どこか心地がいい。

その喪失感が消えるまで、私たちは友人。

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